山水堂
ビニルハウス
ビニルハウス
街を颯爽とさ迷う。
辺りは、薄暗く、煌々と灯っているのは、ビニルハウスばかり。
ビニルハウスの中を覗いて、僕は、必要なものを探している。
必要なものが何か、わからない。
わかっていたら、わざわざ覗かなくてもいいっていう心境だ。
ハウスの中は、時に蒸し暑く、時に恐ろしいほど寒い。
すべての感覚を研ぎ澄まして、僕は、ビニルハウスの中の植物を一つ一つ丹念に触る。
植物の形状が、まるで人間の姿をしているのに注視せずに──。
これでもない、と僕はため息をついて、そっと首に該当する部分に手をかけ、ぶちりと丹念に折ってゆく。
首から上が、必死の形相で僕を睨んでいたことなんてわかっている。
植物がしゃべれないのもわかっている。
でも、どうして首を折る必要があるのかがわからない。
もう、この植物を確認して済むからだ、という、つまらない理由を用意しておく僕自身を発見して憂鬱になる。
すべての植物の頭を取ると、僕は勝ち誇ったようにビニルハウスを出る。
そして、また、街をさ迷う。
次なるビニルハウスを目指して。
平成十八年六月六日