ショウキャクロ

焼却炉

 「君は、恋愛をたとえるとナンだと思う? 」

 という問いに、Sはまじめな顔をして答えた。

 「焼却炉さ。」

 「ハハ──君らしいナ。思い出を次から次へと燃やしてしまうのか? 」

 「イヤ──燃え上がったが最後、大抵の材料で火は熾るという意味さ。大抵の材(、)料(、)ならね。そして煙はそっぽから揚がるんだ。気にしなくてはならないのは──。」

 「君にも気になることがあるのかい? 」

 「ああ、あるとも。気にしなければならないのは、風(、)向(、)き(、)さ。」

 

平成十七年六月二十一日